…………
遊馬『お前とデュエル? いきなりどうし』
ピッ
小鳥「…………」
小鳥「遊馬とデュエル、しなきゃ……」
小鳥「遊馬と、楽しいデュエルを……ふふっ、ふふふふ」
警官「そこの君、何をしているんだ?」
小鳥「…………」
警官「駄目じゃないか、夜に1人でこんな場所に居るなんて。ちょっとこっちに来なさい」
小鳥「……邪魔、するの?」
警官「は?」
小鳥「誰にも邪魔させないから……私と遊馬との、デュエルを」ゴゴゴ
…………
遊馬「切れてる……何だったんだ、あいつ?」
アストラル「遊馬、私には小鳥の様子が普段とは違う様に見えたのだが?」
遊馬「ああ、俺もだ。しかも今から公園でデュエルなんて……そもそもあいつ、デュエルなんて出来ねえだろ?」
明里「――デュエルが何ですって?」
遊馬「うわっ、びっくりした!? 明里姉ちゃん、入って来るなら先に声くらい掛けてくれよ」ドキドキ
明里「掛けたけどアンタが気付かなかっただけよ。ていうか何1人でブツブツ喋ってるの? 正直気味悪いわよ」
遊馬「いや、それはその……そ、それより何か用があって来たんだろ?」アセアセ
明里「あーそうそう。アンタ今日の帰り、小鳥ちゃんと一緒じゃなかったの?」
遊馬「いや、今日は小鳥の奴は用事があるからって先に帰ったけど……何で?」
明里「さっき小鳥ちゃんのお母さんから電話があったのよ。小鳥ちゃん、学校は出たらしいんだけどまだ家に帰って無いらしいの。連絡もつかないらしいわ」
遊馬「何だって?」
アストラル「……遊馬、嫌な予感がするぞ」
遊馬「俺もだぜ、アストラル……姉ちゃん、俺ちょっと出掛けて来るから!」
明里「えっ、今から?」
遊馬「ああ、そうだ。もし小鳥のかーちゃんからまた電話があったら心配すんなって伝えといて!」
明里「アンタ、もしかして小鳥ちゃんが何処に居るのか知ってるの?」
遊馬「とにかく行って来るから! 家の鍵は開けといてくれよな!!」ノシ
明里「ちょ、ちゃんと事情を説明しないさい! 待ちなさいってば、遊馬ぁ!!」プンスカブックス
ヤンデレっぽくなられた小鳥もいいね
数分後、公園にて……
遊馬「うぅ、夜の公園って何か薄気味悪いな~」
アストラル「遊馬、早く小鳥を探そう」
遊馬「おう、そうだな。おーい、小鳥ぃー! 何処だー! 来てやったぞー!!」
アストラル「ん……遊馬、あそこを見ろ!」
遊馬「あそこって……げっ、おまわりさんが倒れてる!? だ、大丈夫ですか?」
警官「」
アストラル「見たところ外傷は無さそうだが……なぜこんな場所で?」
遊馬「とりあえず病院に運んだ方が良いかもな。救急車を……」
小鳥「――やっと来てくれたのね」
遊馬「なっ、小鳥?」
小鳥「待っていたわよ、遊馬」ニコッ
遊馬「おい、いきなりこんな所に呼び出して何だよ? しかもいっちょまえにデュエル・ディスクなんか付けてさ」
小鳥「電話で言った通りよ。私は遊馬と楽しいデュエルがしたいの」
遊馬「小鳥?」
アストラル「遊馬、彼女の様子は明らかにおかしいぞ」
遊馬「と、とにかく今日はもう遅いから家に帰ろうぜ。小鳥の母ちゃんも心配してるし、デュエルしたいんなら別の日に……」
小鳥「嫌よ。私は今遊馬とデュエルがしたいの……せっかく邪魔者も眠らせたんだしさ」
遊馬「邪魔者? おい、まさかこのおまわりさんをやったのは……」
小鳥「うん、私だよ。だってこれから遊馬とデュエルするのに、私をここから連れ出そうとするんだもの」ニコッ
遊馬「お、お前、笑いながら何笑えない冗談言ってんだよ? お前にそんな事が出来る訳……」
小鳥「出来るわよ。何度も言う様に、私は遊馬と楽しいデュエルがしたいの。今すぐしたいの」
小鳥「その為なら……何だってしてみせるわ」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
アストラル「これは!?」
遊馬「小鳥の背後から闇が……なんだよ、これ!?」
小鳥「デュエル……デュエル……遊馬と楽しいデュエル……ふふっ、ふふふふふふふふ」
遊馬「こ、小鳥?」
アストラル「遊馬、どうやら小鳥はあの闇に完全に意識を乗っ取られている様だ」
遊馬「まさか、バリアンか? バリアンの奴らが小鳥を……」
アストラル「いや、今回は彼らが原因では無いだろう。彼女の右手を見ろ、闇の力の出所はあそこだ」
遊馬「カードが握られてる……まさか!?」
アストラル「『No.』だ。しかもかなり強力な負の力を持っている……」
小鳥「さあ、早くデュエル・ディスクを構えてよ、遊馬。私は貴方とデュエルがしたくてたまらないのよ!!」
アストラル「遊馬、小鳥を救うにはデュエルしかない。デュエルに勝ち、『No.』の呪縛を断つのだ!」
遊馬「やるしかねえって事かよ……くそっ!」
遊馬「良いぜ、小鳥! そのデュエル受けてやる! そして俺とアストラルでお前を操る見えない糸を切ってやる!!」
小鳥「さあ、始めましょう、遊馬! 私と遊馬で織り成す、最高に楽しいデュエルを!!」
遊馬「いくぜ! デュエル・ディスク、セット!!」
ジャキジャキジャキーン!
遊馬「D・ゲイザー、セット!!」
ピルピルピルピル……
『ARビジョン・リンク完了』
遊馬&小鳥「デュエル!!」
九十九遊馬(LP4000)VS観月小鳥(LP4000)
遊馬「先行は俺だ! 俺のターン、ドロー!!」
小鳥「遊馬とデュエル……楽しいデュエル……うふっ、うふふふふふ」
遊馬「小鳥の奴、いくら何でもキャラ変わり過ぎだろ? あんな笑い方する小鳥なんて俺、初めて見たぜ?」
アストラル「これも全て彼女にとり憑いている『No.』のせいだ。早くデュエルに勝ち、彼女を解放するんだ」
遊馬「ああ、そうだな……俺はモンスターを裏守備表示でセット! さらにリバースカードも1枚出すぜ!!」
遊馬(いくら『No.』に洗脳されているからって、元はデュエルなんてほとんどした事の無いド素人の小鳥なんだ。すぐに元に戻してやるから待ってろよ!)
遊馬「俺はこれでターンエンドだ! さあ、何処からでも掛かってきやがれ!!」
小鳥「そう、ならそうさせて貰うわ……私のターン、ドロー!」
小鳥「いくわよ、私は手札から永続魔法《神の居城-ヴァルハラ》を発動するわ!!」
カッ!!
遊馬「うお、眩しい!? なっ、何だ? 小鳥の背後に光り輝く神殿が?」
小鳥「《ヴァルハラ》は神々が住まう聖域……その効果により、私は自分の場にモンスターが居ない時に限り、手札の天使族モンスター1体を特殊召喚する事が出来る!
さあ、現れなさい――《大天使クリスティア》!!」
《大天使クリスティア》 レベル8 ATK2800
アストラル「これは……!」
遊馬「後攻1ターン目から攻撃力2800の最上級モンスターだって? あいつ、何であんな大型モンスター持ってんだよ!?」
小鳥「さあ、待ちに待った遊馬との初バトルよ! 私は《大天使クリスティア》で遊馬の裏守備モンスターに攻撃よ!!」
守備モンスター:《モグモール》 レベル2 DEF800
ドゴオオオオオン!!
遊馬「くっ、だけど今破壊されたモンスターは《モグモール》! こいつは破壊された時、一度だけ墓地から特殊召喚する事が出来る! 蘇れ、《モグモール》!!」
し~ん……
遊馬「……あ、あれ? お、おい、何で復活しないんだよ?」オロオロットン
小鳥「無駄よ。だって私の《クリスティア》には特殊効果があるんですもの。このカードがフィールド上に存在する限り、『一切の特殊召喚が出来なくなる』っていう効果がね」
遊馬「攻撃力2800もある上にそんな効果まで持ってるのか?」
アストラル「これは非常に不味いぞ、遊馬。特殊召喚が出来ないという事はエクシーズ召喚も出来ないという事。
そして我々のデッキの主力のそのほとんどはモンスター・エクシーズだ」
遊馬「つまりあのモンスターを何とかしないと《ホープ》も呼べないって事か……くそ、『No.』さえ気を付ければ良いと思っていたのにとんだ伏兵だぜ」
アストラル(どうやら彼女のデッキ、かなり高いレベルで組まれている様だな)
小鳥「私はこれでターンエンドよ……さあ、もっと攻めて来てよ。楽しいデュエルはまだまだこれから何でしょ? うふふふふふふ」
遊馬「だからその気味の悪い笑い方は止めろってば! 俺のターン、ドロー!」
遊馬「特殊召喚が出来ないなら、通常召喚で強いモンスターを出せば良いだけの話だぜ!
俺は《ゴゴゴジャイアント》を攻撃表示で召喚するぜ!!」
《ゴゴゴジャイアント》 レベル4 ATK2000
小鳥「攻撃力2000? それじゃあ私の《クリスティア》は倒せないわよ」
遊馬「へっ、これだから初心者は困るぜ! デュエルモンスターズはモンスターと魔法・罠の『コンブ』ネーションが重要なんだよ!
俺は手札から魔法カード《破天荒な風》を《ゴゴゴジャイアント》を対象に発動するぜ!!」
《ゴゴゴジャイアント》 ATK2000→3000
小鳥「攻撃力が3000に上がった……!」
遊馬「《破天荒な風》はモンスター1体の攻撃力を次の俺のターンまで1000ポイントアップさせる魔法カードだ!
これで《ゴゴゴジャイアント》の攻撃力は《クリスティア》を上回ったぜ! さあ、このままバトルだ!!」
アストラル「待て、遊馬! 《クリスティア》は光属性だ。小鳥のデッキが天使族を中心として組まれているのなら迂闊な攻撃は……」
遊馬「いけ、《ゴゴゴジャイアント》! 《大天使クリスティア》に攻撃だ!!」
小鳥「ふふっ、ダメージ計算時に手札から『オネスト』の効果を発動!!」
遊馬「何? このタイミングで手札からモンスター効果だって!?」
ゴオオオオオオ……
遊馬「《クリスティア》の翼が虹色に輝き出した……?」
小鳥「《オネスト》は自分に光属性モンスターが戦闘を行う時、手札から墓地に送る事で発動出来るの。
そしてエンドフェイズまでその光属性モンスターの攻撃力は、戦闘を行うモンスターの攻撃力の数値分だけアップするのよ!」
遊馬「何だって!?」
《大天使クリスティア》 ATK2800→5800
小鳥「さあ、私の可愛い《クリスティア》! 《ゴゴゴジャイアント》を返り討ちにしなさい!!」
ドゴオオオオオン!!
遊馬「どわああああぁぁぁぁ!!!」
アストラル「遊馬!!」
九十九遊馬 -2800ポイント LP4000→1200
遊馬「くそっ、一気にライフが削られちまった……あのデッキ、マジで強い」
アストラル「デッキが強いだけでは無い。《オネスト》の発動タイミングから考えて、小鳥はあのデッキを使いこなしている。
『No.』で多少はブーストされているだろうが、彼女自身もデュエリストとしてそれなりの実力を持っているはずだ」
遊馬「そんな……あいつ昨日まで全然デュエルなんて出来なかったはずだぜ?」
アストラル「なら昨日から今日までの間に学んだのだろう。デュエリストとしての才能が突然開花するのはそう珍しい事でも無い。
誰かから教えを請いたのか……少なくとも今の小鳥は私と初めて会った頃の君より遥かに強い(断言)」
遊馬「お、俺の昔の実力は初心者が1日で越せるレベルだって言いたいのかよ……くっ、誰だよ? 小鳥にデュエルを教えたのは?」
…………
璃緒「へくちっ!」
凌牙「うわっ、汚ねえな!? くしゃみするなら向こう向けよ」
小鳥「何時まで地べたに座っているの? 早くデュエルを続けましょうよ……このままだと遊馬、次のターンで私にやられちゃうよ?」
遊馬「くそっ!」
アストラル「遊馬、君は小鳥を初心者だと侮り過ぎている。それでは彼女を救う事は出来ないぞ」
遊馬「ああ、今の一撃で目が覚めたぜ。ここからは正真正銘、100%本気でやってやるから覚悟しろよな、小鳥!」
小鳥「それでこそ遊馬よ。こんなに早くデュエルが終わったらつまらないもんね……ああ、次はどんな一手を見せてくれるか楽しみだわ~」クネクネ
遊馬「腰をクネクネ動かすな! お前はそういうキャラじゃねえだろ! 絶対正気に戻ったら後悔すんぞ!?」
遊馬(このターン、俺はもう通常召喚したから壁モンスターを出す事は出来ない……だけど!)
遊馬「俺はリバースカードを1枚セットしてターンエンドだ!!」
アストラル(その戦略は悪くないぞ、遊馬)
《大天使クリスティア》 ATK5800→2800
小鳥「私のターン、ドロー! さあ、遊馬……この状況をどう足掻いて来るのか楽しみだわ! バトル! 《クリスティア》で遊馬にダイレクト・アタック!!」
アストラル「遊馬、前のターンに伏せたカードを使え!!」
遊馬「おう! 罠カード発動、《ホーリージャベリン》! この効果で、攻撃して来た《クリスティア》の攻撃力の数値分だけ、俺のライフを回復する!!」
九十九遊馬 +2800ポイント LP1200→4000
小鳥「ライフ回復の罠カードか……だけどそれじゃあ《クリスティア》の攻撃は止められないわ!」
遊馬「うわあああああ~~~!!」
九十九遊馬 -2800ポイント LP4000→1200
小鳥「何を伏せていたのかと思ったら、ただの時間稼ぎの罠カードだったんだ。ちょっとだけ拍子抜けかな?」
アストラル「……いや、これで良い。我々の目的は《クリスティア》のダイレクト・アタックを受ける事にあったのだから」
小鳥「え?」
遊馬「くっ、罠カード《痛恨の訴え》を発動! このカードは自分がダイレクト・アタックを受けた時に発動される!
そして相手の場で一番守備力の高いモンスターのコントロールを次の俺のエンドフェイズまで得る事が出来るのさ!!」
遊馬「お前の場に存在するモンスターは《クリスティア》のみ! よって俺は《クリスティア》のコントロールを得る!!」
小鳥「私の《クリスティア》が奪われた? ふふっ、良いわ……それでこそ、それでこそ遊馬よ!!」
小鳥「さあ、もっと私を楽しませてよ! 私はモンスターを裏守備表示でセットして、ターンエンドだよ!」
遊馬「主力モンスター奪われても気持ち悪いのは直らないままかよ……やっぱり一発ガッツンとやらないと駄目なのか? 俺のターン、ドロー!!」
遊馬(しかし勢いで《クリスティア》を奪っちまったけどここからどうすれば良いんだ?
《痛恨の訴え》の効果で奪ったモンスターは攻撃が出来ないし、エンドフェイズには小鳥の場に戻っちまう。何とかこのターン中に《クリスティア》を処理しないと……)
アストラル「遊馬、何をしている? 早く《クリスティア》を素材にエクシーズ召喚をするんだ。今の君の手札なら、それが出来るはずだ」
遊馬「はあ、何言ってんだよ? 《クリスティア》が居る限り、一切の特殊召喚は出来ないんだぜ? それでどうやってエクシーズ召喚するんだよ?」
アストラル「君こそ何を言っている? 《痛恨の訴え》の効果でコントロールを得たモンスターの効果は無効化される。
《クリスティア》の特殊召喚を封じる効果も、このターンまでは無効となっている」
遊馬「……あ」
アストラル「まさか忘れていたにも関わらず奪ったのか? 呆れたものだな、君は」ジトー
遊馬「うっ、うるせえよ! エクシーズ召喚だな? モンスター・エクシーズを出すんだな? 良いぜ、やってやるよ! かっとビングだ、俺!!」アセアセ
遊馬「いくぜ、まずは《バチバチバチ》を召喚!!」
《バチバチバチ》 レベル3 ATK800
遊馬「さらに俺は手札からレベル4のモンスターを墓地に送り、魔法カード《レベル・マイスター》を発動!
この効果で俺の場に存在する2体のモンスターのレベルは、エンドフェイズまで墓地に送ったモンスターと同じになる!」
《大天使クリスティア》 レベル8→4 《バチバチバチ》 レベル3→4
小鳥「これで遊馬のフィールドにレベル4のモンスターが2体……!」
遊馬「俺はレベル4となった《クリスティア》と《バチバチバチ》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオバーレイ・ネットワークを構築!」
ドドドドド!!
遊馬「エクシーズ召喚! 現れろ、《No.39 希望皇ホープ》!!」
ホープ「ホオオオオオオオォォォプ!!」
《No.39 希望皇ホープ》 ランク4 ATK2500
遊馬「さあ、反撃開始だぜ! 俺はさらにオーバーレイ・ユニットとなった《バチバチバチ》の効果を発動!
このカードを素材としてエクシーズ召喚に成功した時、そのモンスター・エクシーズは守備モンスターに対して貫通ダメージを与える効果を持つ!!」
小鳥「!」
遊馬「バトルだ! 俺は《ホープ》で小鳥の裏守備モンスターに攻撃! ホープ剣・バチバチバチスラッシュ!!」
守備モンスター:《シャインエンジェル》 レベル4 DEF800
斬!!
小鳥「きゃあああああぁぁぁ!!」
観月小鳥 -1700ポイント LP4000→2300
遊馬「やべえ、ちょっとやり過ぎちまった!? だ、大丈夫か、小鳥?」ダッ
アストラル「待て、遊馬!」
小鳥「……痛い……転んじゃったよ、遊馬ぁ……」
遊馬「小鳥?」
小鳥「肘、擦りむいちゃった……だけどこの痛みは、遊馬とデュエルしている証拠なんだよね? 私、遊馬と本気のデュエルをしているんだよね?」
小鳥「だったら嬉しいなぁ……もっと、もっと傷つけ合おうよ、遊馬ぁ……楽しい、楽しいデュエルをいっぱいしよう……ね?」クスクス
遊馬「こ、小鳥……」
アストラル「遊馬、最初に言った通り小鳥は『No.』に操られているだけだ。あの言葉も表情も、本当の彼女の物では無い」
遊馬「分かってる! 分かってるけどよぉ……」
小鳥「デュエルを続けよう、遊馬……『シャインエンジェル』は戦闘で破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の光属性モンスター1体を特殊召喚する事が出来るの。
その効果でデッキから2体目の『シャインエンジェル』を攻撃表示で特殊召喚するよ」
《シャインエンジェル》 レベル4 ATK1400
小鳥「さあ、遊馬はこのターン、まだ何か私を楽しませてくれる事があるのかな? もう戦闘も終わったし、手札もないから難しいと思うけど?」
遊馬「くっ、俺はこれでターンエンドだ」
小鳥「うふふ……じゃあ今度は私が遊馬を楽しませてあ・げ・る♪」
小鳥「私のターン、ドロー! 私は《ヘカテリス》を攻撃表示で召喚!」
《ヘカテリス》 レベル4 ATK1500
小鳥「これで私の場にもレベル4のモンスターが2体揃ったわ……」ゴゴゴ
アストラル「小鳥を包む闇の瘴気が増していく……来るぞ、遊馬!」
小鳥「見ていてね、遊馬。私のエクシーズ召喚を! 私はレベル4の《シャインエンジェル》と《ヘカテリス》をオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!!」
ドドドドド!!
小鳥「開け、希望無きパンドラの箱よ! 汝の導く狂気の運命を、この世界にまき散らせ!!」
遊馬(小鳥の背後の神殿が……黒く染まっていく!)
小鳥「降臨せよ、《No.85 クレイジー・ボックス》!!」
《No.85 クレイジー・ボックス》 ランク4 ATK3000
遊馬「なっ、何だよ? この気味の悪いでっかい箱は!?」
アストラル「これが小鳥を操っている元凶……しかし何と禍々しいオーラを放つ『No.』だ」
小鳥「これで、これでさらに遊馬とのデュエルが楽しくなるわ……ふふふっ……うぅ……うああああああぁぁぁ!!!」
遊馬「小鳥!?」
アストラル「不味い! 『No.』が顕現した事で、小鳥を縛る闇の力が強くなっている!?」
遊馬「小鳥、もうデュエルを止めろ! そんなカード捨てちまえ!!」
小鳥「い、嫌よ……デュエルを止めるなんて……私は遊馬との楽しいデュエルを……続けるんだもん……」
遊馬「ふざけんな! お前が苦しんでんのに……それの何処が楽しいデュエルだよ!!」
小鳥「うるさい! 私は止めない……絶対に遊馬との楽しいデュエルを止めない!!」キッ
小鳥「私はオーバーレイ・ユニットを1つ使い、《クレイジー・ボックス》の効果を発動!!」
ギュルュギュルギュルゥゥゥ!!
アストラル「これは……《クレイジー・ボックス》の六面にそれぞれ数字が浮かび、空中で回転を始めただと?」
小鳥「私の《クレイジー・ボックス》は攻撃を行なえない代わりに、6つの特殊能力を持っている! 但し発動される効果を選ぶのは私では無く、《クレイジー・ボックス》自身!!」
小鳥「さあ、《クレイジー・ボックス》! この場に最も相応しい目を選びなさい!!」
遊馬(回転した《クレイジー・ボックス》が……止まる!)
出た目:『5』
小鳥「《クレイジー・ボックス》の5の目の効果は、フィールド上のカード1枚を破壊する効果……消え去りなさい、《ホープ》!!」
ドゴオオオオオオォォォン!!
遊馬「くっ、《ホープ》!?」
アストラル「《ホープ》が一撃で破壊されただと……これがあの『No.』の力か!」
遊馬「不味いぜ、アストラル! もしこのまま直接攻撃を受けたら……」
アストラル「慌てるな、遊馬。《クレイジー・ボックス》は攻撃を行う事は出来ない。
それに小鳥はすでに通常召喚を終え、場にモンスターが居る事で《ヴァルハラ》の効果も使えない。追撃の可能性は低いはずだ」
小鳥「それはどうかしら?」フフン
アストラル「何?」
小鳥「さっき遊馬も言ったじゃない。デュエルモンスターズはモンスターと魔法・罠のコンビネーションが重要なんでしょ?
大丈夫、私ちゃんとその事については教えて貰ってるから」
小鳥「つまりこうすれば良いんでしょ! 私は手札から魔法カード《禁じられた聖杯》を《クレイジー・ボックス》を対象に発動!
このカードはエンドフェイズまでモンスター1体の効果を無効にし、攻撃力を400ポイントアップさせる!!」
《No.85 クレイジー・ボックス》 ATK3000→3400
遊馬「効果が無効になったって事はつまり……」
アストラル「『攻撃を行う事が出来ない』という効果も、無効になった!?」
小鳥「もう遊馬には手札もモンスターもリバースカードも無い……このターンの攻撃で私の勝ちは確定だね」
小鳥「でも安心して。このデュエルが終わったら、すぐに次のデュエルを始めましょう……そう何回でもやれば良いのよ」
小鳥「何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも何回でも……」
小鳥「楽しいデュエル、しましょう♪」ニパァ
遊馬「くっ、小鳥!」
小鳥「とりあえず1回目のデュエルはこれで終了……さあ、《クレイジー・ボックス》」
クレイジー・ボックス「…………」
小鳥「遊馬を、押し潰して!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
遊馬(やばい、この攻撃を受けたら俺のライフは……!)
ヤンデレ最高!
ところでユベル化したってことは小鳥ちゃんと遊馬で超融合…
遊馬(駄目だ、防ぎ切れねえ……くそっ、俺には小鳥を助ける事は出来ないのかよ!)
アストラル「諦めるな、遊馬! 墓地のカードを使え!!」
遊馬(墓地のカード……そうか!)
遊馬「俺は墓地の《タスケナイト》の効果を発動! 自分の手札が0枚で相手が攻撃して来た時、一度だけこのカードを墓地から特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了させる事が出来る!!」
小鳥「何ですって?」
《タスケナイト》 レベル4 ATK1700
遊馬「ふぅ、これで《クレイジー・ボックス》の攻撃は止まったぜ……ありがとな、《タスケナイト》」
小鳥「いつの間にそんなカードを墓地に……あ、もしかしてあの時?」
…………
遊馬『さらに俺は手札からレベル4のモンスターを墓地に送り、魔法カード《レベル・マイスター》を発動!
この効果で俺の場に存在する2体のモンスターのレベルは、エンドフェイズまで墓地に送ったモンスターと同じになる!』
…………
小鳥「凄いよ、遊馬。仕方ないからこのターンは終わらしてあげる……うぅ!」フラッ
遊馬「小鳥……悪いけどやっぱ俺、このデュエルは楽しめねえや。だって小鳥がこんなに苦しんでんだもん」
小鳥「はぁ……はぁ……」
遊馬「だけどお前は止める気なんてないんだろうな。その気味の悪い箱が、止めさせてくれないんだろうな……だったら」
遊馬「こんなつまんねえデュエルはさっさと終わらせて、そんな箱は潰して、後で俺が本当に楽しいデュエルってもんを教えてやるぜ!」
小鳥「はぁ、はぁ……遊馬……」
アストラル「遊馬、この状況ではこれ以上小鳥からの攻撃を受け切る事は不可能だ。
このデュエル、このターンが勝負だぞ!」
遊馬「分かってる! 小鳥、お前は絶対に俺が助けてやるからな! 俺のターン、ドロー!!」
遊馬(このカードはこの前デッキに入れた……よし、まだいける!)
遊馬「俺は《アステル・ドローン》を攻撃表示で召喚するぜ!」
《アステル・ドローン》 レベル4 ATK1600
遊馬「これで再び俺の場にはレベル4のモンスターが2体揃った!
俺はレベル4の《タスケナイト》と《アステル・ドローン》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
ドドドドド!!
遊馬「エクシーズ召喚! 来い、ガガガ学園の華麗なる狙撃手――《ガガガガンマン》!!」
《ガガガガンマン》 ランク4 ATK1500
小鳥「攻撃力1500……そんなモンスター・エクシーズじゃ私のモンスターは倒せないわよ!」
遊馬「まだだ! 俺はオーバーレイ・ユニットとなった《アステル・ドローン》の効果を発動!
このカードを素材としてエクシーズ召喚されたモンスター・エクシーズは、新たな効果を得る!」
小鳥「《バチバチバチ》と同じ、モンスター・エクシーズに効果を付加する効果……!」
遊馬「その効果により、《ガガガガンマン》のエクシーズ召喚成功時に、俺はカードを1枚ドローできる!」
アストラル(これが我々に残された最後のドロー……遊馬!)
遊馬(逆転のカードを引き当ててみせる! そして小鳥を救うんだ!)
遊馬「かっとビングだ、俺! ドロォー!!」
シュバァ!!
遊馬「……来たぜ、小鳥! お前を救うカードが!!」
小鳥「なっ、まさか本当に逆転のカードを?」
アストラル「君のここ一番の引きの強さには何時も驚かされる……勝利の方程式は全て揃った! 行け、遊馬!!」
遊馬「おう! アストラル!!」
遊馬「俺はまずオーバーレイ・ユニットを1つ使って、《ガガガガンマン》の攻撃表示時の効果を発動!」
遊馬「このターンの間、《ガガガガンマン》は相手モンスターと戦闘を行う時、攻撃力が1000ポイントアップする!
そして戦闘を行う相手モンスターの攻撃力は500ポイント下がる!」
小鳥「確かにその効果なら《ガガガガンマン》の攻撃力は《クレイジー・ボックス》と互角になる……だけど忘れたの、遊馬?
『No.』は『No.』でなければ倒せない! 攻撃して来ても返り討ちよ!!」
遊馬「お前の方こそもう忘れたなか? デュエルモンスターズで重要なコンブネーションって事を!」
遊馬(小鳥を救う為に……シャーク、力を借りるぜ!)
遊馬「俺は手札から《アーマード・エクシーズ》を発動! この効果で墓地の《ホープ》を《ガガガガンマン》に装備させる!!」
小鳥「それは前に遊馬がシャークから貰ったカード……《ガガガガンマン》に《ホープ》の鎧が装着された!?」
アストラル「《アーマード・エクシーズ》の効果により、今《ガガガガンマン》は『No.』となり、《ホープ》と同じ攻撃力を得た!
これで《ガガガガンマン》は《クレイジー・ボックス》を倒す事が可能となった!」
《ガガガガンマン》 ATK1500→2500
小鳥「そ、そんな……だ、駄目だよ……それじゃ……」
小鳥「ここで私が勝たないと……遊馬、次のデュエル受けてくれないかもしれないし……私は遊馬との楽しいデュエルを終わらしたくなんか……」ガタガタ
遊馬「デュエルくらいこれから何度でもやってやる! 但しやるのはお前が苦しまない、本当に楽しいデュエルだ!!」
小鳥「遊馬……」
遊馬「その為にも、その不気味な箱をぶっ壊す! 《ガガガガンマン》、《クレイジー・ボックス》に攻撃だ!!」
《ガガガガンマン》 ATK2500→3500
《No.85 クレイジー・ボックス》 ATK3000→2500
遊馬「かっとべ、《ガガガガンマン》! ガガガ流ホープ・ショット!!」
クレイジー・ボックス「!?」
ドガアアアアアン!!!
小鳥「きゃあああああぁぁぁ!!」
観月小鳥 -1000ポイント LP2300→1300
小鳥「うあぁ……アアアアアアアア!?!?」
遊馬「小鳥!」
アストラル「《クレイジー・ボックス》本体を倒した事で、小鳥への呪縛が弱まっている……遊馬、このデュエルを終わらせろ!!」
遊馬「分かった! 俺は《アーマード・エクシーズ》のもう1つの効果を発動!
このカードで装備したモンスター・エクシーズを墓地に送る事で、装備していたモンスターはもう一度攻撃を行う事が出来る!!」
《ガガガガンマン》 ATK2500→1500
小鳥「遊……馬……」
遊馬「この一撃で目を覚ませ、小鳥! 《ガガガガンマン》で、ダイレクト・アタックだ!!」
ガガガガンマン「ガガガァ!!!」
カッ!!
観月小鳥 -1500ポイント LP1300→0
九十九遊馬WIN
…………
遊馬「完全に寝てやがる。たくっ、気楽なもんだぜ」ヤレヤレクス
小鳥「すぅ……すぅ……」←遊馬におんぶされてる。
遊馬「しかしこの寝顔見ていると、ついさっきまであんな怖い顔で笑っていたのと同じ奴とは思えねーな」
アストラル「全ては小鳥にとり憑いていた『No.』が原因だ。無事に回収された今、もう彼女に害はない」
遊馬「そういや回収した『No.』は大丈夫なんだろうな? 《ブラック・ミスト》の時みたいに後から暴走したりなんかしないよな?」
アストラル「回収後は大人しくしているからその心配はないだろう。ただ念の為、デュエルでの使用は控えておいた方が良いかもしれない」
遊馬「そっか……あー、なんかすげー疲れた。こんなしんどいデュエル、もうこりごりだぜ」ハァ
遊馬「だけど良かったよ、小鳥が無事に助かってさ。倒れていたおまわりさんも、デュエルが終わったらすぐに目を覚ましたし」
アストラル「多少我々の事に不信感を抱いていた様だったがな」
遊馬「あ、そういや1つ分からない事があるんだけどさ」
アストラル「何だ?」
遊馬「こいつ何で今更デュエルなんて始めたんだろ? あんな強いデッキまで用意して……少し前まではデュエルにそこまで興味なんてなかったはずなのに」
アストラル「小鳥とは長い付き合いなのだろ? 分からないのか?」
遊馬「何だよ、その意地悪な言い方? 本当、最近のお前は人間臭くなって来たよな」
アストラル「……『No.』には持つ人間の欲望を増幅させる力がある。だから暴走していた小鳥の言動の中にも、少なからず彼女の本心が隠されていたはずだ」
遊馬「つまり……?」
アストラル「本当にデュエルがしたかったのだろう、君と。楽しいデュエルをな」
遊馬「小鳥が、俺と?」
遊馬「…………」
遊馬「……そっか」
小鳥「う、う~ん……」
遊馬「お、起きたか?」
小鳥「遊馬……あれ? 私……?」
遊馬「もう少し寝ていて良いぞ。家に着いたら起こしてやるから」
小鳥「うん、そうさせて貰う……何だか頭、ぼんやりするし……」
遊馬「おう」
小鳥「……ねえ、遊馬……私、怖い夢を見てた……」
遊馬「夢?」
小鳥「私が遊馬を……傷つけちゃう、夢……そんな事、したくないのに……止められなくて……」
遊馬「俺がお前に傷つけられんのか? そりゃまた怖い夢だな~」
小鳥「うん……本当に、怖かった……」
遊馬「そうか……でもそれは本当にただの夢だ。忘れちまえよ、そんなもん」
小鳥「……うん」コクリ
遊馬「…………」
小鳥「…………」
遊馬「なあ、小鳥」
小鳥「……なあに?」
遊馬「今更言うのも遅いかもしれねーけど……やっぱ言っとく」
遊馬「…………」
遊馬「ごめんな」
数日後……
小鳥「遊馬、次はあっちのお店入るわよ!」
遊馬「はぁ!? まだ行くのか? これで何軒目だよ?」
小鳥「何言ってるのよ。この前約束破ったお詫びに休日は私に付き合ってくれるって言ったのは遊馬の方じゃない。そうよね、アストラル?」
アストラル「ああ、私も確かにそう記憶している。遊馬、自分の発言にはちゃんと責任を持つべきだ」
遊馬「そりゃ確かに言ったけどさ、もうこれ以上荷物なんて持てねーぞ?」
小鳥「遊馬は男の子なんでしょ? それぐらい頑張って持ちなさいよ」
アストラル「そうだ。頑張れ、男の子」
遊馬「アストラル、お前絶対この状況楽しんでるだろ……あーもう、持ちますよ! いくらでも付き合いますよ、ちくしょー!!」
小鳥「~♪」
遊馬(どうやらこの前の事は本当に何も覚えてないみたいだな……まあこいつにとってはその方が良いだろうけどさ)
小鳥「そうだ……遊馬、買い物が終わった後なんだけどさ、ちょっと付き合って欲しい場所があるの」
遊馬「ん、何処だよ?」
小鳥「……広場」
遊馬「広場って俺が鉄男達と良く行く広場か?」
小鳥「うん、そこで遊馬とちょっとやりたい事があるんだ……駄目、かな?」
遊馬(小鳥が広場で何がしたいのか、勿論俺にはすぐに分かった)
遊馬(当然俺に断る理由なんて無い)
遊馬(それに例えこいつ自身は忘れていても、俺はこいつと約束した)
遊馬(だから答えなんて最初から決まっている)
遊馬「おう! いくらでも付き合ってやるぜ、小鳥!」
<おわり>
>>72
乙。
いい話だった。
何でクレイジーボックスなんだwww
>>73
当初は小鳥っぽく憑りつくのは《フォーチュンチュン》にしようかと思ったんですけど、自分ではそれを上手く使うデュエルが考えられず、何やかんやで《クレイジー・ボックス》になりました。
デュエル構成を毎週考えている人は偉大だ。
後、《クレイジー・ボックス》より《クリスティア》相手の方が遊馬が手こずっている気がするのは多分気のせいではないでしょう。
小鳥は遊戯王史上さいかわヒロイン
俺はアンナ派
引用元:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/14562/1390391632/